授業料 | ノスタルジック小学校

授業料

次女ががさごそと部屋の掃除を始めた。

彼女が
親から言われもしないのに、いきなりこういうことをする時は
何かあるに決まっている。

問いただしてみると、財布をなくしたとのこと。
やっぱりね。

数日前に近所のスーパーで買い物をしたのは覚えていて、
それ以来行方が分からないと言う。

掃除の前に、まずそのスーパーに聞きに行かせたが、届けはないとのこと。
(彼女には内緒だけど、私もこっそり電話で問い合わせてみた)
帰り道にある交番でも聞いたらしい。でもない。

部屋中かたづけてみたものの、結局家の中にもないようだ。

普段から
必要な分だけ財布に入れて買い物に行くようにと
口を酸っぱくして酸っぱくして
絞りたての穀物酢くらい酸っぱくして言っていたのに。

財布の中には三千円入っていました。
――授業料としてはちょっと高すぎやしませんか。

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世の中には
財布を落とす人と落とさない人の二種類が存在するようだ。

私は日常生活においてまず財布を落とさない。なくさない。
私が財布をなくしたのは、今までの人生の中でたった一度きりだ。
たしか小学生の高学年のとき
本屋で立ち読みをしていて、そのまま家に帰ったら財布がなかった。
すぐにその本屋に戻り、お店の人に聞いてみたら
きちんと届いていた。
うれしくなって受け取って中をあけてみたら
入っているはずのお金がなくて空っぽだった。まあ500円くらいだったんだけど。
だけどその一瞬で、ものすごく深く人間不信に陥った。
それ以来、財布をなくしたことがない(笑)。

夫は財布をなくす種類の人間だ。

しかも金額が半端じゃない。
もらったお給料をまるごと落としたことが二度ほどある。
これにはもう二人揃って青くなるしかなかった。
もちろん本人がいちばん青くなってはいたけれど、
なにしろひと月分の生活費である。
すとんとどこかに落としてくるという根性がまったく信じられない。
他にも、運転免許証やらの入った財布をなくしてみたりしている。
それも一度や二度じゃないのだ。
どんなに気をつけてもなくす人はなくす。
それはもう運命としか言えないくらいに。

でもって
私の周りでは
なくす運命の人となくさない運命の人が結婚しているパターンが多いのだ。


             ――ちょっと続いたりして。