白い鳩
ぶらりと鶴岡八幡宮に出かけた。
本殿へのお参りをすませて、ぷらぷらと歩いていると
中学生と思われる一団がやって来た。
一団といっても
数人ずつ固まって
あちこちを思い思いに散策している様子である。
修学旅行だろうか。
それとも社会科見学だろうか。
急ぐふうでもなく、みんなゆっくりと歩いている。
デジカメで写真を撮ったり
手に持った冊子と辺りを見比べたり
砂利を踏みしめる音もそこだけ心なしか軽やかだ。
鶴岡八幡宮には
源氏池と平家池とがあり、
源氏池には白い蓮と三つの島、
平家池には赤い蓮と四つの島がある。
三は産に通じ、源氏の繁栄を、
四は死に通じ、平家の滅亡を、
それぞれ祈願して築かれたのだとか。
そして
白い蓮に誘われるように、
不思議なことに
源氏池には白い鳩が集まるのだと聞いたことがある。
源氏池の島のひとつに祀られている旗上弁財天は
そんなわけで
白い鳩がたくさん見られることで有名だ。
そう
ここは白い鳩が有名なのだ。
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やがてぷらぷらと
弁財天めざして歩いていると
先ほどの中学生のうちの、とあるグループとすれ違った。
女の子ばかりの5~6人の
制服姿のグループが
きょろきょろしながら歩いている。
すれ違いざまに聞こえてきた。
・・・白い鳩なんて いなくねぇ?
・・・いねぇ いねぇ。
しばらくすると
今度は男の子のグループがやって来た。
同じようにこちらも制服姿で5~6人だ。
そして、やっぱりすれ違いざまに聞こえてきた。
・・・白い鳩なんていないよねぇ。
・・・うん、いないよねぇ。
女の子のほうは茶髪にルーズソックスで紺バッグ抱えていて、
男の子のほうはつやつやした黒髪に眼鏡をかけてマジメそうで・・・
なんてことはなく
どちらもまったく今どきの、かわいらしい感じの子どもたちでした。
――おかしくねぇ?
――笑。