子どもの頃の買い物事情 | ノスタルジック小学校

子どもの頃の買い物事情


先日のこと。
夫と、家からちょっと離れた道路を走っていたら
民家の間に
いわゆる古めかしい時計店がぽつんとあった。
間口も狭いし奥行きもないような店だったから
こんなところで商売して(えらく失礼だけど)
やっていけているのが不思議だねーなんていう会話になった。
でも
そういえば昔は
腕時計が動かなくなったりしたら、こんなお店に持って行ってたよなー
なんて夫が言った。
そうだよね。
時計店も電気屋さんも魚屋さんも文房具屋さんも本屋さんも
どれも個人経営店で、すぐ家の近くにあった気がする。
今はもうみんな、チェーン店化した店舗とか
大型小売店の中のテナントを頼りにするようになっちゃいましたね。
全国どこに行っても同じ看板の店を目にするっていうのは
なんというか、ちっとも面白味がないようにも思うけどね。

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子どもの頃
近くの駄菓子屋とか商店に、お小遣いを持っておやつを買いに行っていた。

うちは禁止だったんだけど
たまにツケでもっておやつを買う子がいた。

お小遣いを持たずにお店に入り、
友だちと一緒に適当なお菓子を選ぶと
私たちは30円とか50円とかをおばちゃんに払うんだけど
その子は
「えっとタナカですけど、ツケといてください」
とか言うの。

そうするとおばちゃんは
はいはい、タナカのケンちゃんね。
なんて言いながら手垢の付いた帳面を出して
なにやら鉛筆を舐めなめ、日付と商品名と値段を(たぶん)書き込んでいくんだよね。

これが一度やってみたくてね(笑)。

「ツケで・・・」っていうのがなんだかカッコよく思えて仕方がなかった。
母親にツケでおやつを買いたいなんて頼むんだけど絶対に許してくれない。

たしか小学校2年生くらいのことだったと思う。
母親が遠い親戚のおばさんと出かけなきゃならなくなった。
そこは母子家庭で、中学生くらいのお姉ちゃんがいたんだけど
そのお姉ちゃんの家で、
ふたりで夕方まで留守番をすることになった。

お昼頃になると
「はおちゃん、サンドイッチでも作ろうか」
と言って、お姉ちゃんがパンとハムと卵ときゅうりなんかを用意し始めた。

「あ、マヨネーズがないなー。困ったなー。
 ・・・そうだ、はおちゃん。
 そこの角を曲がったらお店があるからおつかいしてきてくれない?
 うちの名前を言って、ツケでいいから。


チャンス到来!

夢にまで見たツケでの買い物が出来る!

喜んで、言われたとおりに小さな個人商店に走った。

迷わずマヨネーズを手に取り、お店のおばちゃんに向かって
「えっと、そこのカネコですけどツケでお願いします!」
満足げにもそう言って、きちんと帳面に書いてもらい、お姉ちゃんちに戻った。

家に入ったとたん、
マヨネーズをひと目見たお姉ちゃんが目を丸くした。
「はおちゃん!
 どうしてこんなに大きいの買ってきたのよ!
 うちはふたり暮らしだから小さいので十分なのに!」


ツケで買うという行為のうれしさに比例したのか、
思わず特大サイズを選んでしまったのだ。

月末に
おばさんがまとめて支払う仕組みを実はよく知らなかった。

結局その大きなマヨネーズは
夕方になってうちの母親が引き取ることになった。

ちょっとよそ行きの洋服を着た母と
マヨネーズをぶら下げて
ふたりして
暗くなってから我が家に辿り着いたことを今でもよく覚えている。