長い廊下 | ノスタルジック小学校

長い廊下


O田小の南校舎の2階には長い廊下があった。

木造の校舎の2階は
4年生と5年生と6年生の教室がひとつずつあって
5年と6年の教室の間には、階段わきの広くなったスペースがあった。
階段わきのスペースには手洗い場と、
高学年用の埴輪や土器や石器なんかのレプリカが飾られた棚があった。

放課後になると
よくその長い廊下を何往復も拭き掃除したものだ。

もちろん自主的になんかじゃなくてさ。
――罰掃除だよね。

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何度も書いたけれど、O田小は各学年ひとクラスずつしかない小さな学校だ。

良い面もたくさんあったけれどもちろん悪い面もある。

そのうちのひとつに
子ども達が授業中になかなか発言をしないというのがあった。

田舎の子ども達だし、みんな気兼ねもなく元気いっぱいなんだけど
どういうわけか
チャイムが鳴って授業が始まるととたんにしゅんとおとなしくなるんだよね。

先生が
これ分かる人?なんて聞いても誰も答えない。しーんとしてる。
考えや感想を聞かれても積極的に話せない。
仕方なく先生が指名すればきちんと答えられるんだけれど。

困った先生が考え出したのが
どの授業でもいいからみんな一日に一回は発言をしようというもの。
一日一発言作戦。

でもこれ、
せっかく発言しても
そのことを誰かが記憶してくれていないと成立しないというキビシイものだった。

だから子ども達は
答えに自信のある挙手のときは周りの友だちの顔を見渡し
無言で
「今から答えるからさ、覚えててよね」という懇願の表情をする。

あの長い廊下の罰掃除が懸かっているんだからみんな必死なのだ。

帰りの会になると
「お前今日発言したか?」
とイジワルな男の子がたいてい聞く。
「・・・したよ」
「いつ?」
「うんとぉー、国語のぉ・・・意味調べのとき」
「うそつけー!お前、罰掃除決定!」
みたいな会話が毎日繰り広げられる。

イジワルな子ってどうしてあんなに目ざといんだろう。
やばいなーと思っている気弱な子をばっちり見つけて一気に攻撃するもんね。
私も何度か引っかかったことあるけど。世の常なのかな。

他にも
忘れ物がいくつたまったらとか学年によって違いはあるんだけど
放課後は毎日、どこかの学年の誰かしらが必ず罰掃除をしていた。
おかげで足腰が丈夫になったもんだ(笑)。

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でもさ
最近の子ども達はとてもよく発言しますよね。
授業参観などで見ていると本当に驚いてしまう。
よく手は挙がるし、声は大きくてはっきりしゃべるし。立派だなあと思う。

まあたまに
それって同じことをさっき別の子が言ったじゃんってときもあるけれども。